「幸せの湖」


とある病院で 一人の女の子と一人の男の子が 同じ日に生まれた
二人とも ごく普通のどこにでも居る可愛い子供だった...外見は
女の子の名前は幸(ユキ)と付けられ 男の子の名前は幸(コウ)と付けられた。
これも偶然(ぐうぜん)だったのだろうか...?
親の愛に見守られ 二人は仲良くスクスクと大きくなっていった。
ただ一つの事を除(のぞ)いては...
その力に気付いたのは いつも側に居たコウだった。
ユキは 他人の悲しみや苦しみを自分に吸収してしまい その人の心を癒(いや)し
暖かい気持ちにさせてしまう 力があった。
ユキに取り込まれた悲しみや苦しみは どうなってしまうのか
コウは心配でならなかった。
ユキは 生まれた時からずうっといつも側に居てくれたことで
それは浄化されていた。
そんな二人も やがて社会人となり同じ職場で 頑張っていた。
そして コウの才能が認(みと)められ 3年の海外研修を任命された...
コウは天にも上る気持ちだったが ただ一つ気がかりな事はユキの事だった
「よし!ユキも連れていこう!!」と思い コウは言った
「ユキ 僕と一緒に行ってくれないか?ユキ一人置いていくのは心配だ...」と
「それだけじゃない 僕(ぼく)の側(そば)に居て欲しい...伴侶(はんりょ)として」
「愛してる ユキ」これは コウの本心だった。
コウの言葉に ユキは本当に嬉しかった...が
不思議な力を持った私が 一緒に行って重荷(おもに)にならないだろうか
ユキは 自分の事より回りの人のことを優先(ゆうせん)してしまう 心優しい女性だった
「コウ ありがとう...」
「わたしも コウを大切に想ってるわ...でも コウにはお仕事  精一杯(せいいっぱい)頑張(がんば)ってきて欲しいの」
「たった3年よ 3年経(た)ったらコウは返って来るんだもん...大丈夫よ」
とユキは 淋(さみ)しさ隠(かく)し微笑(ほほえ)みながら そう言った。
「わかった...ユキ」と言い コウはポケットから小さな箱を取り出し
「僕(ぼく)が帰るまで ムリするなよ」
「なにかあったら すぐ飛んで返るからな...」と箱の中からリングを取り出し
「ユキの側(そば)には いつも僕(そば)が居るよ」コウは ユキの左手にはめた。
このまま時間が止まってほしい ユキもコウも そう思った。

そして コウは海外へ旅立っていって 数日が経(た)ったある日
ユキの両親(りょうしん)が不慮(ふりょ)の事故で 亡くなってしまった。
あまりにも不意(ふい)な両親(りょうしん)の死に ユキは動揺(どうよう)隠(かく)せなく
幾日(いくにち)も幾日も止めど無く泣きつづけ それでも涙は止まらず
側(そば)にコウの居ないユキは 悲しみを浄化(じょうか)することができなくて
やがて ユキの身体(からだ)も涙と化(か)し いつしかそこは大きな湖(みずうみ)となっていた。

コウが 友人からその話しを聞いたのは しばらく経(た)ってからのことだった
慌(あわ)てて帰国(きこく)し ユキの住んでいた場所に行ってみたら
  そこには
大きな湖(みずうみ)となっていた...
その真ん中にキラリと光る物が
よく見ると それはコウがユキの指にはめたリングだった
深い悲しみに耐(た)えきれず 泣きつづけたユキが湖(みずうみ)と化(か)したことを
コウは認(みと)めざるを得(え)なかった。
「ユキ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
と叫(さけ)んだ時 爽(さわ)やかな風がコウの頬(ほお)をなでた
「わたしは ここに居るわ お返りなさい」とユキが言ってるようだった
「もう僕(ぼく)は どこにも行かないよ ずっとユキの側(そば)に居るからね」とコウは誓った
それから コウは召(め)されるまで ユキの側(そば)に通(かよ)いつづけ
湖(みずうみ)のユキも ここを訪(おとず)れる人たちの悲しみや苦しみを取り 癒(いや)しつづけた

そして年月は経(た)ち いつしかそこは「幸せの湖(みずうみ)」と呼ばれるようになった。
幸(ユキ)と幸(コウ)の「幸せの湖(みずうみ)」 どこかにあるかも知れませんね。


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